畏饅頭2007/01/09 09:50

受験生の息子が持っていた古典の教科書を、ぺらぺらとながめていると、目に飛び込んできた「畏饅頭」の文字。

どれどれ、ふむふむ、頭をひねって読んでみる。

有窮書生欲食饅頭計無従得一日見市肆有列而鬻者輒大叫仆地。主人驚問。曰「吾畏饅頭」主人曰「安有是」乃設饅頭百枚置空室中閉之伺於外寂不聞声。穴壁窺之則食過半矣。亟開門詰其故。曰「吾今日見此、忽自不畏」主人知其詐怒叱曰「若尚有畏乎」曰「更畏臘茶両椀爾」

 貧しい書生があった。饅頭が食いたいが手に入らない。ある日町に行くと店で売っていた。それを見て、うゎっと叫んで地面に倒れた。店の主人が驚いて、訳を尋ると「饅頭が怖いものでして」。主人は「そんなばかな」と思いながらも饅頭百個と書生を一緒に部屋に入れて外から様子をうかがったが静まりかえって音もしない。穴からそっと中の様子をうかがうと、もう半分以上食べてしまっている。そこで戸を開け、どういうことかと詰め寄ると、「今日はこれを見ても恐ろしくない」と言う。主人はそれは嘘だと見抜き、腹を立てて「ほかに何か怖いものがあるか」というと、書生が言うには、「あとは玉露が二杯怖い」。ちゃんちゃん!

落語「饅頭こわい」は、中国の古典が原典だったのだ。

ただし、中国と日本の饅頭は趣が違う。日本は甘い餡だが、中国は肉まん。状況も相当にニュアンスが違う。

受験生が居ると、なにかと勉強になる。

饅頭を、怖いほど食べてみたい。だが、その次に来る、メタボリクな体がこわい。