卒業2007/01/08 20:51

おかるが、柚子ケーキを焼いていると、そうべえが台所にひょいと入ってきた。

「今日で、卒業だな・・・」

そうべえはうれしそうに、空になった哺乳瓶を掲げた。

子牛が一頭、正月から腸炎を起こし、容態が一進一退にあった。風で体が消耗しないよう、子牛のいる部屋の周りにブルーシートを回し、赤外線ランプで暖め、厳戒態勢をとってきた。

そうべえは、子牛の部屋を「ICU〈集中治療室)」と名づける。

下痢が続くので、水分とミネラル補給をする。獣医に飲ませるよう指示されたものは、ブイヨンスープ。

そうべえは毎日台所で、鍋に固形のブイヨンスープの素を煮溶かす。痛む腰をかばいながら、子牛に温かいスープを飲ませてきた。

1週間が経ち、子牛は無事回復した。スープからも卒業だ。

一方、そうべえ自身も、整骨院で電気をかけたりマッサージを受けたりのかいがあり、腰痛からも徐々に開放されてきた。

「今度は、おら達が卒業する番だべな・・・」

腰をさすりさすり、おかるが笑う。

腰痛からの卒業も、もうすぐ目の前だ。

畏饅頭2007/01/09 09:50

受験生の息子が持っていた古典の教科書を、ぺらぺらとながめていると、目に飛び込んできた「畏饅頭」の文字。

どれどれ、ふむふむ、頭をひねって読んでみる。

有窮書生欲食饅頭計無従得一日見市肆有列而鬻者輒大叫仆地。主人驚問。曰「吾畏饅頭」主人曰「安有是」乃設饅頭百枚置空室中閉之伺於外寂不聞声。穴壁窺之則食過半矣。亟開門詰其故。曰「吾今日見此、忽自不畏」主人知其詐怒叱曰「若尚有畏乎」曰「更畏臘茶両椀爾」

 貧しい書生があった。饅頭が食いたいが手に入らない。ある日町に行くと店で売っていた。それを見て、うゎっと叫んで地面に倒れた。店の主人が驚いて、訳を尋ると「饅頭が怖いものでして」。主人は「そんなばかな」と思いながらも饅頭百個と書生を一緒に部屋に入れて外から様子をうかがったが静まりかえって音もしない。穴からそっと中の様子をうかがうと、もう半分以上食べてしまっている。そこで戸を開け、どういうことかと詰め寄ると、「今日はこれを見ても恐ろしくない」と言う。主人はそれは嘘だと見抜き、腹を立てて「ほかに何か怖いものがあるか」というと、書生が言うには、「あとは玉露が二杯怖い」。ちゃんちゃん!

落語「饅頭こわい」は、中国の古典が原典だったのだ。

ただし、中国と日本の饅頭は趣が違う。日本は甘い餡だが、中国は肉まん。状況も相当にニュアンスが違う。

受験生が居ると、なにかと勉強になる。

饅頭を、怖いほど食べてみたい。だが、その次に来る、メタボリクな体がこわい。

グーグル。アース2007/01/10 22:37

巷で評判のグーグル。アースを導入した。

宇宙から、地球儀を操っているようで、ポインターはまさに「神の手」。東西南北自由自在に世界を動かすことが出来る。

自分の住所を検索すると、なんとも鮮やかな航空写真が見えてきた。

我が家の牛舎や池まで、ズームでくっきり見ることが出来る。

みなで大騒ぎしながらパソコンに釘付けだ。

「今度は、ピラミッドだ!」「いや、ナスカの地上絵を見よう!」

夢はどんどん膨らむが、若葉マークの身。どうにもプログラムを使いこなせない。その上、観光名所をもっと楽しむには、オプションのプログラムを購入しなければならない様子。

とりあえず、我が家を眺めただけでよしとすることにした。

田舎暮らしが窮屈に感じたら、グーグル。アースを眺めてみよう。

だが結局、自分の住む地域を眺めて、ほっとするだけなのだろうけれど・・!

木暮正夫先生2007/01/11 09:54

今朝、Oさんから届いた悲しいニュース。

児童文学者の木暮正夫先生が亡くなった。

昨年5月の森林のまち童話大賞のときも、6月の童話講習会のときも、先生は体調不良で欠席されていた。

残念ながら、直接お目にかかる機会はなかった。だが、手元に、一枚の葉書がある。

「木暮正夫賞」を与えていただいたことへの感謝の気持ちをつづった手紙に対し、闘病の中、わざわざ葉書を下さった。

温かいお人柄のにじみ出る文面だった。わたしの宝物でもある。

また、童話を書く人たちにも、たくさんのエールを残してくださった。人を育てよう・・という方だったと思う。

相変わらずのおっちょこちょいで、たいした文章はかけないが、木暮先生にいただいた言葉を励みに、少しずつ書き続けたいと思う。

先生、どうぞ、安らかにお眠りください。

*木暮正夫先生。プロフイール
1939年群馬県に生まれる。日本児童文学者協会理事長。『また七ぎつね自転車にのる』で赤い鳥文学賞、『街かどの夏休み』で日本児童文学者協会賞を受賞。主な作品に『おおきなタブノキ』(教育画劇)『あっぱれ!わかとの天福丸』(金の星社)『二ちょうめのおばけやしき』(岩崎書店)『キツネとタヌキの大研究』(PHP研究所)など多数。

おかる、バーゲンに行く2007/01/12 20:54

やっと腰痛とおさらばできた。おかるの足取りは軽い。

ぎっくり腰のため、初売りではショッピングモールのベンチでお留守番だった。きょうは、バーゲンへ行くのだ。

一張羅のジャケットは、すでにジッパーが壊れてしまったため、新規購入はおかるの悲願でもあった。

そうべえと待ち合わせの時間を決めた。買い物に使える時間は、きっかり30分。

「良いものを買えよ!」そうべえの声が、おかるの背中をぐいと押す。

衣料売り場に駆け上がると、初売りの売れ残りが、魅力的な割引価格で並んでいる。

おかるは、実は買い物が苦手である。普段の買い物の大半も、共同購入で済ませてしまう。

売り場のハンガーにかかった、ジャケットが、どれもこれも、おかるに手招きをする。

頭がくらくらしかけたところで、直感の声に耳を澄ます。

ふと、「わたしを連れて行ってくださいな」という声がきこえた。

声の主は、光沢のついた、モカのダウンジャケット。着心地はふんわり軽く、それでいて暖かい。しかも3割引。

即、このジャケットを家に連れて帰ることにした。すると困ったことに、となりから、「わたしも!」と言う声がきこえるではないか。

アイスブルーの別珍のスーツが、なんと半額・・!

これは、つれて帰るしかないだろう。

大きな袋を提げて駐車場に舞い戻ると、約束の時間を3分過ぎていた。

そうべえの機嫌は、まだ悪くなっていない。おかるはほっとした。

「ジャケットは買えたかい?」そうべえが興味深そうに聞いてくる。

「いい買い物をした!」

良いジャケットに、スーツまで家についてきた。おかるは、いい買い物をしたのである。

お手上げ2007/01/18 13:19

13にから、PCが修理のために入院した。

家に帰っても、いままでPCがあったところがからんとして、もぬけの殻である。家族が一人いなくなったようで、寂しい。

今までエッセイや童話の原稿も全てワード頼み。すなわち、腕がもがれた状態である。しかたなく、ぼちぼちと原稿用紙を引っ張り出してショートショートを書いてみる。

初めは面倒かなと思った。PCに向かうよりも、推敲には3倍の時間がかかる。切り取りコピーの技も使えない。だが鉛筆を走らせるのも、意外に気持ちが良い。物書きの仲間に、手書き派が多いのもうなずけるような気がした。

さて短い原稿ならいざ知らず、確定申告の処理やら長い原稿となると、のんびりしてはいられない。

早期退院を、首を長くして待っているところである。

ちなみに、今回のブログは、他のパソコンをお借りした。パソコンにも、代車システムっててないのかしら?!

ただいま~!2007/01/23 20:39

入院していたパソコンが帰ってきた。

故障の原因は、モニターの接続部分だったから、プログラムもそのままで一安心。

リカバリになったり、ハードデイスクの破損が原因だったら、今まで積み上げたものを再構築しなければならない。

ほっとした。

電気店から電話を受けるや、すぐに迎えに行った。

夫に、線をつないでもらい、どきどきしながら電源を入れる。

パソコン起動の音がする。タラララ~ン♪

「ただいま~!」と聞こえた。

さっそくメールチェックにホームページの保守。

夫の農業共済新聞に掲載予定の原稿を清書し、顔写真も添付してメール発送。

明日からは、締め切り間直のエッセイ原稿にとりかかる。

PC入院中に、どっさり本も読んだ。静かな生活も楽しんだ。

だがやはり、久しぶりのキーボード操作は、指先に心地よい!