たらの萌2007/04/23 20:47

「どおれ、きょうあたり行ってみるかな」

そうべえが、毎年楽しみにしている、「たらの萌」採りに出かけた。

昼に、袋にどっさりとってきた。田舎暮らしならではの贅沢だ。そうべえ、満面の笑みである。

「晩御飯のときに天婦羅にすっから。あつあつの美味しいとこ食べてな」

おかるは、たらの萌のはかまをとり、きれいに洗って下ごしらえだけ済ませておく。

用足しの挙句、おかるは晩御飯ぎりぎりに帰宅。そうべえは仕事を済ませ、炬燵に当たって晩御飯を待っている。

急いで天婦羅を・・を思いきや、冷蔵庫に卵がない。仕方なく、小麦粉と水だけの、気の抜けた衣をつけて、たらの萌の天婦羅を揚げる。

台所に入ってきた娘が、天婦羅を発見。

「よっしゃ!」とガッツポーズ。萌の天婦羅が大好物なのだ。(娘の名前を考えると、共食いのような気もしないではない・・)

「どれどれ・・」と、そうべえも箸を伸ばす。と、おかるにうらめしそうな目を向ける。

「これじゃ、天婦羅じゃなくてから揚げだろ・・・」

ええ、そんな気がしてましたの。ふっくら衣が足りなくて、ちりちりに揚がったたらの萌。ごめんにょ。

口に入れると、シャクットとした歯ごたえに、ほんのり甘味と苦味が広がった。