陸奥王子2007/08/15 21:27

「お~い!手伝いに来い!」

朝、そうべえが玄関先でいまだ夢の中の息子に、声をかける。

予定日を10日遅れの分娩牛が、中の子どもが大きすぎて難産の予感。(出てきたひずめの大きさで、子牛の大きさまで分かる)

猛暑で母牛も消耗気味。お産に時間をかけるわけには行かない。

ひずめにロープをかけ、かけつけたしげやん、そうべえ、息子の三人がかりで子牛を引っ張り出す。

「でっけ~!」生まれたのは、しげやんもびっくりの、通常の子牛の一回り大きいオスだった。

「これは、将来楽しみだなや~」

しげやんの絶賛に、そうべえも目を細める。

一仕事終え、クーラーの効いた部屋で仙台育英=智弁学園戦を見る。みちのくプリンス、佐藤投手を応援するも力投及ばず、残念。

夕方、朝方生まれた子牛の前で、そうべえが腕組みをしている。

「子牛の名前は、熱闘甲子園にするかな?」

「いえいえ、そこはやっぱり、みちのくプリンスじゃない?」と、おかる。

「う~む、オスの名前は漢字でつける決まりなんだよ・・」

晩御飯のあと、おかるはそうべえに聞いてみた。

「牛の名前、決まったの?」

「陸奥王子に決めた!」

そうべえの、子牛への期待のほどを感じたおかるであった。