ぶんつあんの団子餅2008/02/05 22:37

隣のぶんつあんが、書類を持ってきた。手土産にと、おかるにビニール袋を渡す。

「これ、食ってみせ」と、満面の笑み。

中には、まだやわらかい切り餅が入っていた。おかる、急いで、帰り足のぶんつあんを引き止める。

「ぶんつあんが作ったのけ?」

「んだ!」と、帰ってきたのは得意げな返事。

ぶんつあんは、昔じっちゃんとキノコ戦争を繰り広げていた、おたよさんの息子だ。

男ながら、おふくろの味を守る、まめな人物である。

「ぶんつあん、うまそうだなや!どうやって作るのすかや?」

「いや、これは教えられたってできねえんだ」とぶんつあんは、首を横に振る。

「そこを、なんとか!」とねばるおかる。

「米の粉2升ともち米1升、それに、卵、砂糖にごま、ピーナツの粉も入ってんだ」

「すごいなや!おらも作ってみてえな~!」

おかるの賞賛にぶんつあんも、目を細める。

「んにゃ!なかなかやろうったって、できねえもんだ」

ぶんつあんは、この団子餅を箱につめ、娘に送ってやるのだと、うれしそうに帰っていった。

トースターであぶって食べた、ぶんつあんの団子餅。

ふんわりやわらかで、とろり甘くて香ばしくて!

ぶんつあんの、お袋の味への郷愁の、やさしい味がした。