松露2008/06/27 21:22

法事で実家へ帰った。

ひとしきり、お客様と歓談の後お見送り。

おかるとおとっつあんが、静かになった家に残った。

ソファーでうとうとしていると、おとっつあんが『おまえの山では採れないのかい?」と聞いて来た。

白い皿の上には、丸い小粒の泥団子のようなものが、コロコロしていた。

「何これ?見たことがないよ!」

「これは、松露というキノコである」

なんでも、松の林の地中に出るキノコだそうだ。

手紙も添えられていた。

おとっつあんの兄様が、おとっつあんの好物の松露を、留守中わざわざ届けによってくれたらしい。

「きょうだいとは、ありがたいものだねえ」

おかるはちょっぴり、うらやましい気持ちがした。

おとっつあんが、そのうちのひとつを半分に切って見せた。

マッシュルームのような白い色が現れた。そして、ふわんと、松茸のようなよい香りがした。

おとっつあんは、これを吸い物にして食すと言う。

故郷の山や、兄弟で過ごしたなつかしい日の思い出が、ひと粒ひと粒にぎゅっと閉じ込められているに違いない。