動的平衡2010/04/22 20:18



[動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか]福岡伸一著を読む。

福岡博士といえば、ベッストセラー「生物と無生物の間」が有名だ。(残念なことに、こちらは読んでいない)

博士は、分子生物学の立場から、「生命とは、絶え間ない流れの中にある動的なものである」、という。

プロローグ 生命現象とは何か
第1章 脳にかけられた「バイアス」―人はなぜ「錯誤」するか
第2章 汝とは「汝の食べた物」である―「消化」とは情報の解体
第3章 ダイエットの科学―分子生物学が示す「太らない食べ方」
第4章 その食品を食べますか?―部分しか見ない者たちの危険第5章 生命は時計仕掛けか?―ES細胞の不思議
第6章 ヒトと病原体の戦い―イタチごっこは終わらない
第7章 ミトコンドリア・ミステリー―母系だけで継承されるエネルギー産出の源
第8章 生命は分子の「淀み」

「なぜ年をとると、年月の過ぎるのが早く感じられるのか」、に対する答えが興味深い。

老化の代謝能力低下により、体内時計がゆっくり回るようになる。それにより、実際の時間経過に、自分の生命の回転速度がついていけなくなるからだという。

記憶についての言及も腑に落ちた。生物は刻々と組織の崩壊と再生を繰り返し分子が入れ替わっていく。

人にとって過去とは現在であり、記憶とは「想起した瞬間に作り出されている何物か』であるという。

「生命とは分子の淀みである」・・・・生物とは哲学なのかもしれない。

同時に、「私という現象」という言葉で自らを表した宮沢賢治の鋭い直感と造詣に、思いをめぐらさずにいられない。