2011/12/05 14:12

朝、牛舎のそばを狐が通っていきました。
狸は足先でちょこちょこという小走りをしますが、狐はひょんひょんをはずむように歩きます。
そして、狐の面白いのは、気配を消して知らんぷりをきめこんでいるところです。
牛舎にしゃがみこんで、狐が何をするのか、じっと見ていました。
すると狐は、柿の木から、熟れ柿をひとつくわえて道路におりました。乾草の陰に身を隠した私と狐の距離は、30メートルほど。
柿をかじっては、上を向いてうまそうにカチカチと歯を鳴らす音も聞こえきます。
柿を食い残したまま、キツネはブドウが植えてあるビニールハウスへ入っていきました。
携帯で写真でもとってやろうと、私もそっとあとをつけて、ビニール越しにキツネをのぞいてみました。
人の気配を感じた狐はハッと頭を低くし、全身を堅くして、私を見つめました。
そのまなざしは鋭く、狐はたちまち身をひるがえして、山の方へと走り出しました。
狐がすい込まれた山の茂みまで行ってみましたが、そこはもうしんと静まり返っていて、さっき狐と会ったのは、まるで夢のような気さえするのでした。