おい、たぬき!2011/02/22 16:32



おかるが藁やりから帰ってくると、子牛の「光」がいる牛小屋の前の道を、とことこと狸があるいてくるではないか。
まるで、「これからお勤めに行ってまいります」といったようなまじめな顔をして、歩いてくる。
おかる、自分でも知らぬうちに「たぬき!」と叫んでいた。
すると、狸はぴたりと動きを止め、びっくり眼でおかるを見つめると、あわてたようにひょこひょこと笹の茂みに飛び込んでいった。
家の前で狸と会うのは、これで2度目だ。
初めて会ったときは「おい!」。そして今回は「たぬき!」と呼んだ。
いっそのこと、名前を付けてやろうかと思った。
だが、考え直した。
野生とは一線を画さねばならぬ。
互いに踏み込んではいけない境があるのだ。
今度会ったら、「おい、たぬき!」とよんでやろうかな。