我が家の牛の事:その22011/08/05 21:57

最近、テレビや新聞の取材を受ける機会が多かった、そうべえ・・。
「汚染された稲わらを牛に与えた農家」として、矢面に立って発言しています。
夕方、同じ部落に住むOさんが,わざわざ応援に来てくれました。
親戚にも牛飼いが多いこともあって、そうべえのインタビューや記事、こちらのブログにも、心を痛めて駆けつけてくれたとのことで、本当にありがたく思いました。
Oさんは、放射能の影響について、強い憤りを吐露されました。
「「汚染された△」「汚染された○○」って言うけどさ、どんなに長くなっても、「東京電力の原発事故によって汚染された」と、ちゃんと前に加えて言ってほしいよ」といいます。
私も、その通りだと思いました。大事なところを省略しないでほしいと思います。
Oさんは、汚染の事実が、後出しのように、次々と明らかになってくることにも、怒りを抑えられないと、話してくれました。
Oさんとは、原発が爆発を繰り返していたころを振り返りましたが、、私の住む市は停電のため(1週間も続きました)、テレビの情報は入りませんでした。
東京や西日本の人たちが、リアルタイムで震災の状況を把握していたのとは、対極にいたのです。
ラジオや新聞だけが頼りでした。
地震発生から4,5日間は、市からの広報もなく、伝え聞く話ばかりで、何をどうしたら良いのかもわからない状態でした。
被災地の現場は、情報不足と食糧不足、ガソリン不足の混乱の中にありました。
3月の下旬に、行政からは、「えさのとりあつかいに注意しましょう」という、簡単なFAXが1枚きただけでした。
その後、畜産に関しては牧草の検査は公表され、明確な指示が入りましたが、ワラに関しては調査も指導も、全く入りませんでした。
今回の稲わらの問題にしても、行政も、当事者の農家は、これほど高い線量が出るとは考えもつかなかったのです。(我が家の春ワラは、中国製のガイガーカウンターで約5マイクロシーベルト)
それから、あまり心配もされていませんが、、汚染されたワラを使用していた農家は、何も知らずに高線量のワラの中で作業をしていたのです。
私自身も、相当量被ばくしたと思います・・・・・。
この状況で、東電から「汚染稲わらを与えたのは農家の過失」という文言が出てくることに、疑問を感じます。
Oさんの言うように、「東京電力の原発事故によって汚染された稲わら」と前に加えれば、責任の所在がはっきりするのではないでしょうか。
もちろん、生産者として、消費者の方に謝りたい気持ちに変わりはありません。
でもそれは、安全な食べ物を生産し、食べてもらう人の命を支えてきたはずだったと・・いうことにおいて、謝罪したという気持ちなのです。
汚染疑いの牛は買い上げになり、焼却処分となるようです。
安全な食べ物だけが消費者の方に届くように、信頼される基準値や検査体制の整備は心から望むところです。
一方、牛飼いとして、食べてもらってこそ生きる命に、申し訳なく思っています。
1頭の牛を育てるのには、2年半かかります。
難産や事故死や病気などの、さまざまな困難を乗り越えて育て上げた牛が、「セシウム牛」などと呼ばれて貶められることにも、言葉の軽さを感じます。
そんなことを語り合うことができた、Oさんの来訪には、元気をもらいました。
もうひとつ、元気をもらったことがあります。
先日、農業高校の学生さんたちに会う機会がありました。
「家畜の解体実習を通して、自分を生かしてくれる命の重みを感じた。牛も豚も鶏も、食べられることで、自分たちの命となっていっしょに生きていくのだと思う」
彼らの実感は、自分の体を通して掴み取ったものです。
世の中にあふれる軽い言葉とは一線を画す、地に足の着いた言葉だと思いました。

コメント

_ しの ― 2011/08/10 00:26

ご無沙汰しております。
角田市出身の志野(旧姓:本田)奈津子です。
東京農業大学の学生時代、土の塾でお世話になって以来、旦那さまをはじめ大変お世話になりました。

震災後、なんのご支援もできず本当申し訳ありません。
いまさらになってしまいましたが、ご無事でなによりです。
ブログを拝見しながらもなかなかメッセージを送れないでいました。

混乱の中、娘さんとボランティア活動に励まれる姿は本当に頭が下がります。
また原発被害の現状、その冷静な意見がつづられたブログに強さを感じ、いつも尊敬の想いで拝見させていただいてます。


事実をしってほしいと、勝手ですが私のブログにどじょうさんの記事をリンクさせていただいています。

できることがあればと農家仲間と映画自主上映や勉強会を開いたりと活動中です。
10か月の息子の未来のためにという思いです。


どじょうさんのブログはすてきな言葉がたくさんちりばめられていて、元気がでます。どうぞお体お気をつけてください。

_ どじょう ― 2011/08/10 07:08

>しのさま おひさしぶりです。お元気そうでなによりです。子育て中のしのさまには、食の問題はより切迫したものがあると思います。
消費者の方と生産者が、共通理解ができるといいですね。エール、そうべえにも伝えます。ありがとうございました。

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