卒業2007/01/08 20:51

おかるが、柚子ケーキを焼いていると、そうべえが台所にひょいと入ってきた。

「今日で、卒業だな・・・」

そうべえはうれしそうに、空になった哺乳瓶を掲げた。

子牛が一頭、正月から腸炎を起こし、容態が一進一退にあった。風で体が消耗しないよう、子牛のいる部屋の周りにブルーシートを回し、赤外線ランプで暖め、厳戒態勢をとってきた。

そうべえは、子牛の部屋を「ICU〈集中治療室)」と名づける。

下痢が続くので、水分とミネラル補給をする。獣医に飲ませるよう指示されたものは、ブイヨンスープ。

そうべえは毎日台所で、鍋に固形のブイヨンスープの素を煮溶かす。痛む腰をかばいながら、子牛に温かいスープを飲ませてきた。

1週間が経ち、子牛は無事回復した。スープからも卒業だ。

一方、そうべえ自身も、整骨院で電気をかけたりマッサージを受けたりのかいがあり、腰痛からも徐々に開放されてきた。

「今度は、おら達が卒業する番だべな・・・」

腰をさすりさすり、おかるが笑う。

腰痛からの卒業も、もうすぐ目の前だ。