ふしぎ日和2015/01/31 12:15

ふしぎ日和―あさのあつこ・土山優・八束澄子選 『季節風』書き下ろし短編集 (すこし不思議文庫) 文庫 :主婦の友社
会員対象の公募から、こんな素敵な文庫を出版できる「季節風」は、すごいです。
寝る前に、1話ずつ読みました。
『生まれたての笑顔』(井嶋敦子・著)は、未熟児を出産した小児科医の物語。
敦子さん自身も小児科のお医者様です。
医学的な描写が細部まで書き込まれているので、臨場感が迫ってきます。そして、医者としての自分を必死で生きようとする主人公の姿にも心打たれます。
冷静なイメージから「ロボット」のニックネームを持主人公の表情が、くっきりと変化する瞬間、何とも言えない感動に包まれました。
『うたう湯釜』(森川成美・著)は、明治時代が舞台。
町長の家に奉公をしている蕗は、同じ村出身の若者に淡い恋心を抱いています。
町の発展のため、町長が温泉を新しく 建て直そうとしたところで、反対派との間でひと波乱。蕗も否応なしに巻き込まれていきます。
サスペンスのようにハラハラしつつ、蕗の心理描写に凄味を感じました。
『働き女子! 』(工藤純子・著)は、四十歳のOLがリストラ騒ぎに巻き込まれる物語。人事部長とのやり取りや会社の人間関係もリアルかつおもしろく、出した結論に爽やかさを感じました。
『正義の味方 ヘルメットマン』(吉田純子・著)は、奈々の勤めるホームセンターに毎日、黄色いヘルメットを買いにくる謎のイケメン男との物語。
サービス精神のあふれた吉田さんらしく、笑いがちりばめられていて、最後はほっこりしました。
他に、『裏木戸の向こうから』(村田和文・著)『山小屋』(田沢五月・著)。

コメント

_ 敦子 ― 2015/02/01 07:14

どじょうさん、ご紹介ありがとうございます!
みなさま、ほんとうにお上手。
こんな作家たちが集まっている季節風って、改めてすごい!と思いました。
当事者だったときは、こういう話は書けなかったのだと思います。
とにかく必死すぎて。当然時間もなかったし。
離れて俯瞰してやっと己を晒せるというか。
改めて、身の回りのことをしっかり書けるどじょうさんに感服です。
東北童話塾にむけて、気合いれていきますね!

_ どじょう ― 2015/02/01 07:39

>敦子さん 大人の小説ならではの表現を楽しませていただきました。離れて俯瞰してやっと・・というところ、同感です。当事者では書けない部分もあると、最近よく思います。そんなお話、またしたいですね。東北塾も、どうぞよろしくお願いします。

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