ふたりのため、世界はあるの?2007/05/15 21:14

家の前の田んぼの代掻きを始めた。

すぐに、近くの沼からか、つがいの鴨が飛来した。

そうべえが代掻きする間、田んぼの隅でじっと待っている。

代掻きが終わるや、水面をゆうゆうと泳ぎ、餌をついばむ。ここはまさに、ふたりの世界。

夕方の薄暗い帳の中、田んぼの中でじっと寄り添う鴨の夫婦。

「裏山の狐に食われちちまわねえべか?」

おかるは、つい心配になる。

「大丈夫だべ」

そうべえは呑気に構えている。

「このまま、田んぼで草取りに住み着いてくれればええな」

仲むつまじい鴨の夫婦に、「夫婦道」の真髄を教えられるおかるであった。