キンカン疑惑2007/02/17 20:11

そうべえの、宮崎土産は「日向夏」と「完熟キンカン」だった。

どちらもまず、仏間に置いておく。

昨日のお昼に、おかるがキンカンの箱を開けた。オレンジ色の小さな宝石が、きれいにつめられている。めいめいに少しだけ配った。

「これって、皮剥かないの?」

キンカンなどめったに食べたことの無い子供らが、まぬけなことを言って、大人たちを笑わせる。

完熟キンカンは、まるで砂糖漬けのように甘い!キンカンは、ますます貴重品の様に思えた。

夜も、「キンカン!キンカン!」と、おかるが、キンカンの箱をいそいそと仏間から運んできた。

「あれ!いつの間にこんなに減ったんだや!?」

そうべえが箱の中を見て、びっくりしたような声を上げる。

「お昼に、一人2個づつ配っただけだけんど・・」

おかるも、首をひねる。

昼から夜まで、家にいたのはじっちゃんだけ・・。

みなの心に、キンカン疑惑が沸き起こる。肝心のじっちゃんは、黙ってテレビを見たまま、キンカン騒ぎなど聞こえぬそぶり。

「はじめっから、あんまり箱さ、入ってねがったんだな」

そうべえの言葉に、皆、うんうんとうなずき、また2個づつ分け合っておいしく食べた。

次の日、おかるが仏間に入ると、はっと目を引くものがあった。

仏壇にこんもりと、キンカンがそなえてあった。

「じっちゃんは、仏様とキンカンを食べたんだな」

おかるの胸が、なんだかぽっと、温かくなった。