自然の掟2007/02/01 20:43

そうべえが、千葉に泊りがけの研修に出かけたため、牛の餌やりは、じっちゃんとおかる、受験生の息子の3人の仕事になった。

おかるの担当は、乾草とワラやりだ。

肥育の牛はたっぷり餌を食べているからおとなしい。対極にあるのが、繁殖牛だ。肥満を避けるために、餌の量を抑えているため、餌の時間となると殺気立つ。

おかるは餌鉢に、乾草を押し込む。牛たちは頭を突っ込み、シャクシャク!ワシャワシャ!すごい勢いで食べ続ける。

子牛が母牛の餌鉢に近づこうものなら、大変だ。母牛は頭を振って、子牛を追い払う。

子牛用の小さな餌も、こちらが隙を見せると、たちまちは母牛がバクバク食べてしまう。

「あんたら、そりゃないべや・・」おかるは、悲しくなる。

「自分は食べなくても、子どもに食べさせてやりたいってのが、母親ってもんじゃあないんですかい?」

牛に、つい説教したくなる。

自然の掟では、強いものが生き残る。母牛もまず、自分が生きなくては、子どもを守どころではなくなるだろう。

餌やりも無事終わり、晩御飯は鯵の開きを焼いた。

家族の人数に対して、鯵が一枚足りない。おかるは自分の分は勘定に入れないことにした。すると・・。

「お母さん、私は半分で良い」

娘が、鯵の半身の乗った皿を、おかるのほうに、ついと押してよこした。

ごちになります。すんません。

千葉土産2007/02/02 20:04

夜、そうべえが、千葉研修から帰ってきた。

お土産は、落花生にさつまいも、干し芋に草もち、そして魚の干物。

さっそく晩のおかずに2枚焼いた。

干物は、鯵とメバルのカマの2種類。

鯵の干物はあまりに大きくて、グリルに一枚しか入らない。

焼き上がりを大皿にどん!とのせ、みんなで切り分けていただいた。

そうべえは、満面の笑みである。

「いつも、小さな干物ばかりだから、大きいのが食べたくてさ」

ええ。ええ。そうでしょうとも。あなたの「でかい物」好きはじゅうじゅう承知してますわい。

おかるも、遠慮なく箸を伸ばす。肉厚で旨い!さすがに「でかい」干物はありがたい。

おかるは、ふと不思議な感じがして、そうべえの顔をちらと見てみる。そうべえの表情に不思議と旅の疲労はなく、たくさんの刺激を受けて、頭の中がめまぐるしく動いているのを感じる。

千葉土産を、どっさりかかえてきたようだ。

節分2007/02/03 20:50


今日は節分。

そうべえが千葉から買ってきた落花生は、しばしの間封印。

なにしろ、ボーダーラインにぶら下がる受験生がいるから、ゲンでも何でも担いでしまう、あほな親心なのだ。

節分の古式にのっとり、黒豆で炒り豆を作った。

厚手の鍋に黒豆を入れ、鍋をゆすって炒っていく。

しばらくすると、パチパチと軽い音がして、豆の黒皮が割れ、白い身が見える。これが,炒り終わりのサイン。

熱々を口に放り込むと、豆の香ばしい香りと甘さが広がる。

そうべえと息子が、豆まきを担当した。

縁側のガラス戸も空け、「鬼は外~!」と豆をまく。

じっちゃんが、ぬくぬくと炬燵に当たりながら、「鬼も寒くて、外に出ていがねえんでねえか?」と、冗談をふかす。

縁側を閉めに立ったおかるに、そうべえが豆を1つ、ぶつけたよこした。

「鬼は外~!」

「あんた!あたしに出て行けって言うのかい?」

おかるは、いたずら好きのそうべえに文句をたれる。

豆まきがすんで、皆で炒り豆を、年の数食べる。豆をカリカリかみながら、おかるはふと思った。

「そうべえは、おらの心の中の鬼を、追い出したかったんだべか・・」

世界がもし100人の村だったら2007/02/04 20:24

「世界がもし100人の村だったら」の著者、池田香代子さんの講演を聴きに行った。中学生の娘も連れて行った。

池田さんは、この本が生み出されるまでの経緯や、環境問題、子どもの人権、憲法問題まで幅広くお話しをしてくださった。

今世紀末には4~6度上昇と、危機的な変化が予測される環境問題については、最善の解決策を示してくれた。

すなわち、「戦争をやめる」ことだ。

戦争こそ、環境破壊と殺戮そのものだからだ。

マスコミに流される、大本営ニュースのとらえ方など、社会を見るヒントもいただいた。

会場には、学校の先生も多かった。(女性教師の会が主催だったから)

「世界がもし100人の村だったら 子ども編」の朗読では、子ども達の置かれている状況に、聴衆が涙する場面もあった。

「子どもが、子ども時代を奪われることは、人間が生き延びるに欠かせない幸せの記憶が、うばわれることです。

人間が、子どもを失うことは、人間が備えているはずの 内なる子どもの輝きを失うことです」

サイン入りの本を抱え、娘と講演のことを振り返りながら帰った。

お母様え&研修会2007/02/05 20:33


朝起きると、足元にがさりと1冊のノート。

「お母様え お願い」と書いてある。例によって娘からの、「朝起こして!」のお手紙だ。

「母上様」でなく、変化球を使ってきた。「お母様」とはなんとも心地良い響きではないか。「お母様へ」でなく「お母様え」と書いたところが、ちょっぴりまぬけでおかしい。

お望みどおり、布団をひっぺがし、娘を学校に送りだした後、一日がかりの研修会で仙台へ。

文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課学校評価室 室長の、岸本哲也氏の講演を聞く。

(室長さんの肩書きの長さに、まず驚く)

若くテンポの速いお話しに、こちらも古びた脳に鞭打って追いつくのに必死である。

学校評価、改正教育基本法を受けても今後の対応、いじめ問題、予算案の一部概況について等、盛りだくさんの内容。

教育再生会議の報告にも、「社会総がかりで」や「全力を挙げて」という、力のこもった文字が使われている。

教育に寄せる社会の期待が、今までになく高まっていることも感じる。

一方、現場の先生方の涙ぐましい努力と多忙振りも感じる。

バランスをとりながら、社会全体で教育を支えられたら、そんなことを考えながら、帰宅した。

娘も帰宅していた。もう「お母様」とは,呼んでくれなかった・・。

強風2007/02/06 20:09

日曜は、強い西風が吹き荒れた。おかげで、東北新幹線が止まるほどだった。

今日も強い西風が吹き荒れた。

我が家は、入り江の中の山際にあるので、風が当たらない。山の木々が風でうなる音で、風の強さを推し量る。

屋敷内から出て、「こんなに強かったか!」と驚くこともある。

今日の風は、入り江にも回りこむ風だった。おかげで、2棟あるうちの1棟のハウスが、ビニールをべりべりに引き裂かれてしまった。

春の仕事が、また増えた。

田んぼで藁集めをしているそうべえも、「風で藁が飛ばされて仕事にならん」と、午後からはしばし、様子見になった。

夕方にやっと静かになったが、2月にしてはぬるい空気ごしに、冬の星座もぼんやりかすんで見えた。

北越雪譜2007/02/07 21:38

Aさんに教えていただいて読んだ「北越雪譜」、実に面白い。

雪国の風土や暮らしのエッセイに加え、時折差し込まれた「物語」に引き込まれる。

「くまにたすけられたおとこ」「雪の中の幽霊」「おぼれた漁夫」など、読み応えのある不思議な話が満載。

今日、図書館に出向いたら、偶然、「くまにたすけられたおとこ」を発見した。子供向けの絵本になっていてびっくり。

雪の中、遭難しかけた男が、くまの穴に落ち込む。もう絶体絶命かと思いきや、熊は男を自分の体で暖めてくれたばかりか、手までなめさせる。

熊は冬眠中の食料代わりに、アリをつぶして手に刷り込んでおくと言う。男がなめると、苦甘く感じたと言う。

男は、春まで熊の手をなめ、沢水を飲んで熊とすごす。やがて、雪解けのこ
ろ、熊に案内されて里に降りることができたと言うお話だ。

本自体は当初、旧文体で読みづらかったが、慣れるとこれもまた味わいがあった。

本来ならば、2月の雪降りを眺めながら読みたい本である。

今日は、4月上旬の暖かさ。それでも、さっぱり降らない雪の世界を、「北越雪譜」の中で、堪能することが出来た。