どじょう日記

お昼に、おかるが台所に立つと、調理台に、見慣れぬ物体が1本、ごろりと横たわっていた。

はは～ん。おかるは、合点した。

じっちゃんは、このところ毎日、蓮沼へ犬の散歩に出かけている。

じっちゃんが、そこで蓮根を拾ってきたのだ。

蓮沼はちょうど工事中で、＜沼の中の蓮根が重機で堀り上げられ、岸に転がっている＞・・じっちゃんは、確か昨日、そう言っていた。

調理台の上で、おかるを待つ蓮根。それは、「旨く料理せよ」という、じっちゃんからのサインである。

おかるはとりあえず、がま姉さんから教えてもらった、蓮根とこんにゃくの炒め物を作ってみた。

味は良い。だが、野生化した蓮根のせいか、見た目は黒く、食欲をそそらない。

＜とりあえず、責任は果たしたな＞・・おかるは、ほっとして、台所を出た。

夕方、おかるは晩御飯の支度に台所へ入った。

ぎょえ～！思わず、おかるの口から、うめきが洩れる。

調理台の上には、こんもりと蓮根の山。蓮根の炒め物に気を良くしたじっちゃんが、はりきって拾ってきたのだ。

冷蔵庫にしまいこんで、化石化するのを待つか・・。やはりここは、炒め物としてきっちり形にしてやるべきか・・。

悩ましきかな・・蓮根！